アメリカの「株主第一主義見直し」と米国株の連続増配

こんにちは、寝てタイガーです。

アメリカの経済団体で「株主第一」が廃止されたことがニュースになっていました。

www.bbc.com

アメリカ最大規模の経済団体「ビジネス・ラウンドテーブル」は18日、数十年にわたって資本主義を推進してきた株主第一主義を廃止すると発表した。株主利益の追求はもはやアメリカの実業界の主目的ではなく、今後は利益を生むこととともに、社会的責任を果たすことにも注力すべきだとしている。

18日に発表された声明は「『アメリカ全国民を助ける経済』を推進するため企業の目的を再定義する」と銘打たれ、180人以上の企業トップが署名した。これにはアマゾンやアメリカン航空JPモルガン・チェースなどの最高経営責任者(CEO)も名を連ねている。

日本でいう経団連のような組織である「ビジネス・ラウンドテーブル」は1978年以降定期的にコーポレートガバナンス原則を発表してきました。1997年以降はその原則に「企業は株主のために存在する」明記してきましたが、これを見直し、顧客や従業員、サプライヤー、地域社会、株主などすべてのステークホルダーを重視する方針を表明した、ということです。

この発表に対して、企業に運営方針を変えさせる法的要件はないと指摘する人もいます。 必要な税金や規制の改革を遅らせる戦略の一部なのではないかという懐疑的な意見もあります。

また、今回の方針転換の背景にはミレニアル世代の台頭がある、とする記事もありました。

www.sustainablebrands.jp

米国では、2000年代に成人を迎えたミレニアル世代の労働者が全労働者の約3分の1を占めると言われる。米ビジネス誌「ファスト・カンパニー」は、今回の見直しを後押しした企業へのプレッシャーの大きな要因として、「若い労働者が、経営者に対し、単に利益を最大化するよりもより高尚なパーパス(存在意義)を掲げることを求めている」「消費者が人や環境に良いことをしているように見える企業に注目するようになってきている」「社会的意識の高い投資家らが持続可能性、企業責任、社会的インパクトといった観点を持つ金融商品に膨大な額の投資を行うようになってきている」ということを挙げている。

経済誌「フォーチュン」は若者の資本主義に対する関心の低下を要因の一つに挙げる。2016年のハーバード大学の調査によると、調査した18-29歳の米国人の51%が「資本主義を支持しない」と回答、3分の1は「社会主義に変わることを望んでいる」と回答した。さらに米調査会社ギャラップの2018年の調査でも、「資本主義を肯定的に捉えている」と回答したのは約45%で、2013年から23%下がっていたという。

株主第一主義の結果としての米国株の連続増配

アメリカ企業の株主第一主義の結果として企業の増配について調べてみました。

株式を購入してくれている株主に支払い配当金。

この配当金の支払い額が増えることを増配と呼びますが、日本では29年連続の「花王」が最長となっている一方で、アメリカには花王よりも連続増配年数が長い銘柄が100銘柄近く存在しており、50年以上にわたって連続増配している株が30銘柄近くあります。

これらの大企業は50年以上にわたって連続増配しています。

これらの企業の株式を購入していればもっているだけで、毎年配当金が増えていく訳ですから、株主にとってはありがたい話です。

これまでゴリゴリと株主第一主義を掲げていたアメリカが若い世代の影響力を考慮して方針を転換した、ということですが、これがお題目だけなのか中身をともなったものになるのかは長期的に見ていかないと判断できなさそうです。

発表する側の意図としては、大きな転換を果たしたと第三者に思わせる意図でやっているのでしょうから、「本当にそうなるのか」と疑ってかかることは必要であると思われます。

日本の反応

一方、この発表に対する日本国内の反応をまとめているのがアゴラでした。

agora-web.jp

投資家の藤野英人さんの手厳しいコメントを引用しているのが印象的でした。

これを見て多くの人が日本に近づいてきたという話をされるけれども、現状は日本のほうが福利厚生や地域にお金をかけておらず、四半期決算重視の短期主義がまかりとおっています。それは今のアメリカよりもひどい状態です。日本は株主第一主義ですらなく、役員および経営者の立場第一主義なのが問題です。